私は大学卒業と同時に地元の病院に就職以来、病院薬剤師一筋で仕事をしてきました。
調剤業務はもちろん病棟業務や患者さん向けの勉強会の開催など忙しくも充実した生活を送ってきました。多忙ではありましたが病院薬剤師の仕事はとても好きでした。
が、しかし・・・
6年間務めた病院を退職し、調剤薬局に転職しました。
今回は何故私が病院薬剤師を辞めて薬局薬剤師になったのか、どのように転職活動を進めていったのかを書いていこうと思います。これから薬剤師を志す薬学部生の皆さんや病院勤務の経験がない薬剤師の皆さんにリアルな事情が伝われば幸いです。

病院薬剤師のメリットについて
病院薬剤師を辞めた理由を書く前に、病院薬剤師の魅力についても書いておきます。
病院薬剤師のメリットとしてよく挙げられることは3つあります。1つはクリニックの門前薬局と比較して多くの診療科の処方箋に触れる機会があること、2つ目は注射薬の調剤や混注に関われること、そして3つ目は急性期の治療に携われることです。これは事実だし、調剤薬局に転職してからも実感していることです。
しかし、私が病院薬剤師をやっていて一番大きなメリットだと感じたのは、医師や看護師と治療や最新の医学的知見について存分にディスカッションできることです。どの医療スタッフも多忙ですが、医師も病棟で一息つく時間があります。そんな時、新薬の話題や手術の手技、治療に対する医師の考え方等様々な話題を持ちかけると楽しそうに応じてくれました。看護師も薬について困ったことや患者さんのケアで行き詰っていること等色々なことを相談してくれました。薬剤師は薬物治療の要でありながら医療に携わっている実感を得にくい職種だと思いますが、病棟業務を通して「病棟スタッフの一員として医療に携わっている」という実感を得ることができました。
私は循環器病棟の専任薬剤師でしたが、心疾患だけでなく感染症や癌など幅広い領域の患者さんに関わってきました。病棟業務やディスカッションを通して、疾患について深く理解したり治療薬の選び方を知ったりと多くのことを学ぶことができました。こうした学びを得られるのも病棟薬剤師の醍醐味です。
卒業してすぐ、薬剤師として多くのお金を稼ぎたいとか、頑張ればその分だけ給料が上がる職に就きたいというのでなければ病院薬剤師はやりがいのある素晴らしい仕事だと思います。私も病院薬剤師として仕事ができたことに誇りを持っています。
それでも病院薬剤師を辞めた3つの理由
1. 病院薬剤師の給料は高くないし上がらない
皆さん、5年目の病院薬剤師の年収ってどれくらいだと思いますか?600万円?800万円?それとも1000万円?
答えは・・・
400~450万円です。(残業30時間/月、夜勤2-3回/月、ボーナス込み)
じゃあ、10年目の年収は?
430~450万円です。
あまり上がってないですね。しかも大学で6年間も勉強して国家試験をクリアした割には低いです。
病院薬剤師は世間で思われているより給料が高くありません。病院薬剤師の仕事をテーマにし、ドラマ化された漫画『アンサング シンデレラ』でも主人公の葵みどり(病院薬剤師3年目)が他の薬学系職種と比較して給料が安いことを嘆くシーンがあります。フィクションですが結構リアルな数字が出ていますね・・・。当直手当5000円とか・・・(^_^;)

病院の規模や経営状態、公立病院か民間病院かによっても変わってきますが病院薬剤師の推定年収は約400~500万円と言われています。薬剤部長にまでなればもっと上がるでしょうが・・・。
病院という職場の中で薬剤師が働ける場所は基本的に薬剤部しかありません。(もちろん、業務という意味では病棟や外来でも活躍に場があります。)コミュニティが狭いこともあってか一般企業よりも年功序列的な考えが根強く、管理職のポストも少ないため、
昇進による給与アップが見込めないことも年収の低さに拍車をかけています。
専門薬剤師や認定薬剤師を取得することで手当てをつけてくれる病院もありますが、民間病院では少ないように思います。手当てがあっても資格取得の困難さの割に学会所属費用や登録費用が掛かるためコストパフォーマンスが良いとは言いづらいです。
年収に期待して病院薬剤師を志すのは『絶対に』避けたほうがいいです。
2. 夜勤が年々辛くなってくる

特に夜間救急に対応する病院では夜勤や当直があります。夜間の救急外来のための薬の払い出しや入院患者さんの追加の薬剤の準備をする必要があるためです。忙しさは施設や日によって違うと思いますが、まったく眠れないこともしばしばありました。(医師や看護師はもっと過酷なので、本当に頭が下がります。)
大学に6年間通わなければならない都合上、薬剤師として働き始めるのは20代中盤からです。5年働くとあっという間に30代に突入します。30歳に差し掛かったあたりから夜勤がだんだん辛くなるんです。
夜勤の2日後あたりに体調不良が出始めます。
私の場合は頭痛と軽い吐き気、不眠症状などでした。経験年数を追うごとに日常業務の負担が質、量ともに大きくなる中、日々の疲れを残したまま夜勤に入ることが多くなるのも原因かもしれません。日勤夜勤が入り乱れたシフトになるため体のリズムも整いません。入院している患者さんと話していたら逆にこちらの心配をされるくらいには体調を崩すこともありました。
大学の研究室で朝から晩まで、時には次の日の朝まで研究をしていたり、徹夜でゲームをしていたような若かりし日の体力はその内無くなります。
夜勤を舐めていると肉体的に痛い目をみます。
3. まとまった休みがとりづらい

病棟業務に携わるようになると受け持ちの患者さんへの薬剤指導や多職種カンファレンス、配薬セットなどの業務を調剤業務と掛け持ちで行うことになります。病院薬剤師は数が少なく十分な人員を各病棟に配置することが難しいため、それぞれが担当病棟で手一杯になり、調剤業務もシフト制で行うことになります。患者さんの細かい状況を把握している薬剤師が自分しかいない場合には他の薬剤師が引き継いで業務を行うことが難しいです。薬剤師の人員が豊富な病院は少なく、就職したくても求人が無かったり競争率が高いことも多いです。やりがいと引き換えに自分の時間を切り売りする覚悟が必要です。
まとめ
病院薬剤師は素晴らしい仕事ですが金銭面、体力面、ワークライフバランス面で割に合わない職種です。
私が病院薬剤師を辞した理由もその3つに当てはまります。病院薬剤師のすばらしさを感じられたのも、入職した病院に恵まれていただけに過ぎないのかもしれません。
読み返すと病院薬剤師になることを薦めているのか留めているのかどっちつかずの記事になってしまいましたが病院薬剤師になることを考えている皆さんに私の経験が役立てば幸いです。
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